すっとこ太郎のすっとこ日記1
(どこからともなくお囃子が流れてくる)
♪とんとんすっとん♪すっとんとん♪
♪すっとこどっこい♪すっとんとん♪
♪てんてんすってん♪すってんてん♪
♪すってんころりん♪すってんてん♪
♪今日もほいこら聞こえてくるぞ♪
♪ひょっとこどっこい♪ひょっとんとん♪
♪ひょっとこどっこい♪ひょっとんとん♪
(へっ。まーた、あの野郎。屋根に登って、氷、たたいてやがる。
おいらの目の届く範囲で勝手なことしやがって。へっ。
そうだ。アドバイスしてやる体で、かまってやっか。へっ。)
すっとこ「おーい。何やってんだ。」
あの野郎「あっ、こんにちは。氷、落そうとしています。」
すっとこ「落とさなくても、落ちねぇんだからな。滑り止め付いてんだから。」
あの野郎「そう、そうですよねぇ。(わかってるよ)」「ただ、氷落さないと、溶けた水が屋根の下に入り込むんですよ。」
すっとこ「あぁ、巣潜りってやつだな。」
あの野郎「すもぐりっていうんですか?」
すっとこ「おお。」
あの野郎は、お前が潜ってろよと思った。
すっとこ「お前ぇ、そんなやり方じゃだめだ、お前ぇ。」
「まず。へっ。屋根の雪全部落とさないとだめだ。へっ。」
そうなのだ。すっとこは、会話を「へっ」でサンドイッチするのだ。
あの野郎「そうですよねぇ。」
すっとこ「おらぁ、貸してやっから。ダンプ。」「ほら、これ使え、これ。豪雪地帯で使ってるやつなんだ。(こんなの知らねぇだろ)」
あの野郎「ああぁ~、そうですかぁ?」
あの野郎は、腹が立ったので、あえて関西弁の語尾で返事をした。
あの野郎「ありがとうございます。」
「チンピラ」のいうことには極力逆らわない、それがあの野郎の処世術。
その後、小一時間、あの野郎は、「律儀に」屋根上の雪を落とした。
すっとこは、終始食い入るように見つめていた。
そして、いつでもいちゃもんをつけることができるよう、ひな壇芸人さんのように貪欲な感じで、小さな体を前に乗り出してただでさえ細い目を細めて凝視していた。
あの野郎は、作業中一度誤って滑って転んだ。
ツチノコ「へっ。お前ぇ、出っ張ってるとこ歩かねぇと、だめだ、お前ぇ。へっ。」
(説明しよう。ツチノコはすっとこの最終変態である。)
あの野郎「あっ、すいません。」
全く謝る必要はないことは、言うまでもない。