倒産処理の指導理念ー伊藤眞『破産法・民事再生法〔第3版〕』尾行録2日目

 

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●倒産処理の目的:総債権者の満足の最大化、利害関係人の権利の公平な実現、債務者の経済的再生

●この目的を実現するための手続(倒産処理手続きに共通する指導理念)ー1公平・平等・衡平の理念、2手続保障の理念

●「公平・平等・衡平の理念」の意味:

(1)序

【理論】平等原則が公平原則に内包され、一般的正義としての公平が個別的正義としての衡平によって修正されるものであること

【実質】実体法があらかじめ想定することが困難な個別・具体的事情にもとづく判断の余地を裁判所に認める必要があること

(2)公平・平等・衡平の適用場面ー債権者間、それ以外の利害関係人との間

ア 債権者間:

≪原則:公平≫実体法上同じ性質をもつ債権者に対しては、手続上でも平等な取り扱いを、異なる性質をもつ債権者に対しては、その差異に応じた取扱いを

実体法が権利の性質に違いを設けて、それぞれの間に順位を設定しているのは、社会的公平や取引当事者の意思などを考慮したものであり、倒産処理手続きのなかでそれを無視することは実体法秩序を無視することになること・債権者の合理的期待にも反すること

≪例外:衡平≫実体法上は同じ性質の権利であっても、債権の発生原因などの個別・具体的事情を考慮して、取扱いに差を設ける

イ それ以外の利害関係人との間

 

●「手続保障の理念」

(1)必要性

∵倒産処理手続の目的実現のために、債務者や債権者の権利に対して様々な制限や変更を加える→この制限・変更は、債務者や債権者の意思にかかわりなく、手続内で行われる裁判の効果→そこで、判決手続の場合と同様に、裁判によって不利益を受ける者について、それを正当化するに足る主張や立証の機会を保証する必要がある

(2)保障の程度の相対性(25ページ)

・債権者の手続参加の意欲の点

民事再生・会社更生(事業の再生を目的、取引の継続の利益が期待)>破産手続(清算を目的、債権者は清算価値の配分を受領するという受動的立場)

・手続保障の形態は、再生型手続と同一である必要ない(∵破産手続は権利の変更を予定しない)

・しかし、大規模な事件では、破産においても、上記の点が当てはまるとは限らない。