誣告の伝兵衛。≪小説・新連載vol.7≫
ほ~ら、伝兵衛だぞ。
あの野郎、やっぱり来やがるな。
おら、今日は、爆弾を仕掛けてやるぞ。
それはな、こういうからくりだ。
おら、いつも帰り支度を始めるのは、15:00だ。
その時間の30分前、だから、14:30に、帰り支度を始める。
そのとき、あの野郎が、おらを尾行するために、あの野郎も帰り支度を始めるかどうかを、あの野郎がごそごそし始めるかどうかを耳で聴き分けるんだよ。
もし、あの野郎がごそごそし始めたら、おらは、おらの指定席に例のこ汚い紙を置いて自習室を出ていくんだ。
でもよ、おらは本当に帰るわけではないんだ。
図書館の奥深くへと隠れているんだよ。
そして、1時間後の、15:30に、自習室に戻るんだ。
あの野郎がいることを確かめたら、何食わぬ顔をして、そのこ汚い紙を取りに戻るんだ。
その時は、いつもの薄っぺらいチェックのシャツの上に、同じく薄っぺらい馬鹿な革ジャンを着てな。
ま、いわゆる「革ジャン反抗期」ってやつだな。*1
70を過ぎちまってるんだけどな。
それに、下は、洗いざらしのジャージなんだけどな。
愚かな伝兵衛。
何を言っているのか、何をしたいのか、全くわからない。
12:55にトイレの水面台とごみ入れの蓋の上に、朝出かける前に入れたコーヒーの粉や飲み残したコーヒーをばら撒いていることを、すっかり職員にばれている。
70を過ぎて、ますますけしからん。
*1:そんな言葉は無いぞ、伝兵衛。