誣告の伝兵衛。≪小説・新連載vol.11≫
でんべい、でんべえ、でんべいだ。
でんべい、でんべい、でんべいだ。
ほら、伝兵衛だ。
やー、あの野郎、しつけえな。この野郎。
今日も、おら、挑発してやったぞ。
まずは、これだ。
いつもは、15:00に帰るが、きょうは、16:00までいてやったぞ。
あの野郎はおらの事をぜってぇ尾行するんだ。
するに決まっているんだ。
だからよ、いつもより1時間帰る時間を遅らせることで、あの野郎にしびれを切らせるんだ。
そして、帰り支度でおらのかっこいい緑色のニットのジャンバーを、あの野郎のすぐそばまで行って着てやるんだ。
そのとき、あの野郎の勉強の様子をのぞき込んでやるふりをしてやるんだ。
でもよ、あの野郎、一切怖がらなかったんだ。
くそぉ。
あの野郎、なんでおらを怖がらないんだ。
そういや、今日は、いつものラウンジのテーブルにではなく、廊下の窓ガラスのところに、総菜パンのパン粉を捨ててやったぞ。
ざまぁ見ろこの野郎。
そうそう、おら、今日入り口を入ろうとしたら、左側から杖を突いた老人がおらよりも先に入ってこようとしたんだけどよ、おらが先に入ってやったぞ。
おらよりも体が弱っている奴には、一切同情しないぞ。
最低だよ。伝兵衛。