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誣告の伝兵衛。≪小説・新連載vol.22≫

おらだ。

おい。

おら、自習室で勉強していたら、頭がくらくらしちまってよ。

気持ち悪くなったんだい。

でもよ、おらの席で勉強せずに机に突っ伏して休むのは、おらのプライドが許さねぇんだ。

だからよ。

おら、トイレに駆け込んだんだ。

猫は死に目を見せねぇって言うだろ。

あっそうか、わかったぞ。

猫はプライドの塊の畜生だったのか。

まぁ、そんなことはどうでもいい。

そしたらよ、立ちション便器の前でぶっ倒れちまったんだい。

でもよ、意識はかろうじてあってよ。

その便器は、ちょうどいい塩梅に、身体障害者用の手すりが左右についているタイプだったんだい。

その手すりに、両手はしっかりと手すりをつかんで、両肩を預け、何とか立ち上がったんだ。

そうすっとよ、居合わせたどっかの爺さんがよ、おらのただならぬ様子に驚きやがって、図書館の職員を呼びやがったんだ。

駆け付けた職員が、その便器からおらを引っぺがそうとしやがるんだ。

そして、こんなこと、ぬかしやがる。

「大丈夫ですか。安静にするために、お座りください。」

でもよ、トイレの床に座るのは、おらのプライドが許さねぇ。

だからよ、おら、その職員を無視して、手すりから手を離さなかったんだ。

手すりから引っぺがされたら、おらの負けだと思ったんだ。

でもよ、やっぱりなんか頭がくらくらしてよ、どうしても座りそうになっちまうんだ。

そしたらよ、その職員、おらを立たせようと、おらの体を抱きかかえ立たせようとするんで、おらの体が持ち上げられ、おらが立ち上がる格好になるんだい。

でもよ、また、おら、頭がくらくらするから、座りそうになっちまう。

そうすっと、その職員がまた、おらを立たせようと、おらの体を抱きかかえ立たせようとするんで、やっぱりおらの体が持ち上げられ、おらが立ち上がる格好になるんだい。

そんな上下運動を繰り返していると、あの野郎がトイレに入ってきやがった。

すると、あの野郎も、その職員と一緒におらを抱きかかえようとするんで、また、おらの体が立ち上がる格好になる。

(このとき、伝兵衛の上半身は、汗でびっちょりであったという。また、この伝兵衛の上下運動は、ジャックと豆の木でジャックが豆の木のツルを蔦って上っている様子に、瓜二つであったという。豆の木の話なのにね。)

そしたら、図書館の館長たちがやってきて、おらを手すりから引っぺがし、おらを強制的にトイレから引きずり出して、すぐに救急車を呼んだんだ。

そうこうしてたら、おら、意識が無くなったんだよなぁ。

意識が戻った時には、おら、病院のベッドの上にいたんだ。