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誣告の伝兵衛。≪小説・新連載vol.24≫

おっ。おらだ。

伝兵衛だ。

いやぁ、なんだあらぁ。

この込み合った自習室で、おらの左横1席しか空いてないところに。

馬鹿みたく日焼けをした、馬鹿みたいな坊主頭で、馬鹿みたく細い目で、母親からろくなものしか食わせてもらってねぇみてぇな馬鹿みたく細身の男子高校生が、勢いよくやってきやがった。

よくこの空席を見つけやがったな。

たった一つの席をめがけてきやがるその姿勢は、まるで、飛び抜けて元気のいい精子みたいな野郎だ。

おらに恨みがあるのか知んねえけどよ。

机の上に、勢い良く、ショルダーバッグを、ドンと音を立てて置きやがる。

知性のかけらもねぇな。

その馬鹿でかい音を聞いて、その右横に座る女の子がびくっとする。

また、ダサいショルダーバックでな。

下は汗臭いジャージで、上はネイビーのTシャツ。

Tシャツの背中には、オレンジ色で、「EARTH PEACE」とプリントしてやがる。

そうなったらいいよね。この野郎。

机と机の間には、半透明の仕切りがあるんだけどよ。

おらの机の方ギリギリに、メモ帳やら、スマホをそそくさとせせこましく置きやがる様子が、半透明の間仕切りを通して、目に入ってくる。

スマホで音楽を聴きながら勉強しようと、馬鹿みたく長いイヤホンの配線を伸ばして、少しもたつきながら両耳にセットする。

雀の学校の宿題をちぃちぃぱっぱやるってんなら音楽を聴きながらの「ながら勉強」でもできるが、来年のセンター試験対策をしようってんなら、とてもじゃねぇが音楽聞きながらなんてできるわけねぇだろ。この野郎が。

これで来年は、800点満点中、400点を取ることが確定したな、この野郎。

情けねぇ野郎だ。

しかも、おらの足にぶつかっても一言謝罪することもしねぇ。

それに、両脇にいる、おらと女の子に威圧するためかなんか知んねぇけど、背もたれにどっぷりもたれかかりながら約45秒指をぽきぽき鳴らしやがる。

なんて無礼な野郎だ。

この野郎が。

また、この野郎が自転車に乗って帰る様子ときたら。

グレーのパーカーを羽織り。

立ちこぎでペダルを5秒力強く漕いでは、立ちこぎのまま漕がずに5秒進む。

そんな所作を家に着くまで、何度も繰り返す。

恥ずかしい野郎だ。