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誣告の伝兵衛。≪小説・新連載vol.26≫

おい。

おらだ。

伝兵衛だ。

久しぶりのぶりぶりだな。

いやぁ、このまえよ。

あの野郎をからかってやったらよ。

とんでもねぇことになっちまったんだよなぁ。

それは、こういうことだったんだい。

 

あの野郎が14:30頃によ自習室から帰りやがったんだ。

だから、おらよ。

悠々自適に、いつものように、ベンガル語で書かれた絵本を読んでいたんだよ。

そしたら、おい。

15:20に、あの野郎が再び舞い戻ってきやがったんだい。

そして、あの野郎の指定席が他の奴に座られていたせいで、あの野郎はいつもの席に座ることができなかったんだなぁ。

そのため、おらの間後ろの席に座りやがったんだ。

おら、ビックリした。

そして、おら、無性に腹が立ったんだ。

だから、おら、あの野郎の読んでいる本を取り上げてやったんだ。

「おい、何だこの本は?」

「何をするんですか?やめてください。」

こう言ってあの野郎は、おらが取り上げた本をひっぺがえしやがったんだ。

その時、あの野郎の手がおらの手にぶつかったんだ。

「おい、痛ぇじゃねえか。おら、お前がどんな辞書を使ってやがるのか確認するために取っただけなんだぞ。だから、おら、見せてもらうぞって言ったじゃねぇか。」

「何を言ってるんですか。私は耳栓をしているので、聞こえなかったんですよ。」

 

あの野郎は、どんな鬼畜に対してでも必ず敬語で話す。

 

「やっぱりお前は、朝鮮人だ。そんなつっかえを耳の中に入れやがるなんて、朝鮮人のやることだ。この朝鮮野郎。ぜってぇ、お前は朝鮮人だ。」

「つっかえって。つーか、やめてください。公共の施設内で、そのような差別的侮蔑的な発言は慎んでください。」

「何言ってやがる。だからお前は朝鮮人なんだ。この朝鮮野郎。」

 

このお爺さんとは全く話ができないと理解したあの野郎は、すぐさま、図書館の館長さんに対応をしてもらうべく、自習室を出た。

なぜ館長さんかというと、もちろん最高責任者であることもあるが、前回同様の相談をした際に、伝兵衛に直接注意することをためらい、あの野郎に泣き寝入りさせるという解決策を取ったからだ。

あの野郎は、館長に、甘い対応をとると、同じ問題が繰り返されるということを教えるつもりなのだ。

自習室を出るときにあの野郎が伝兵衛の様子を見るために振り返ると、腕組みをしながら小さな体を左右に揺らし、口を尖らせ小生意気な顔をして地団太を踏んでいた。

 

「すみません。館長さんいらっしゃいますでしょうか?」

受付の美しき女性「はい。少しお待ちください。」

すぐに、副館長さんが出てきた。

「どうかされましたでしょうか。」

「いつもすみません。去年に引き続きまた例の男性の老人の方が、わたくしに対しまして朝鮮人発言をしてきます。また、机の上に置いていた私の本を取り上げられました。大変お手数をおかけいたしまして誠にすみませんが、対応していただけませんでしょうか。」

 

副館長は、2,3秒間が空いた後、すぐに自習室に向かった。

あの野郎は副館長とともに自習室に入った。

すると、伝兵衛は覚悟を決めたのか、腕組みをしてまっすぐ前を見て座っていた。

 

「お話がございますので、廊下までお越しください。」

「なんだこの野郎。よし、受けて立つぞ、この野郎。」

 

3人は、廊下に出た。