誣告の伝兵衛。≪小説・新連載vol.6≫
おらだ。伝兵衛だ。
あの野郎、まだ来やがる。
しつこい野郎だ。
もういっちょ、警察に通報だ。誣告だ。
伝兵衛の度重なる誣告に、なんか面白くなってきた警察。
伝兵衛による誣告に真に受けたふりをして、張り込みを開始する。
閉館1時間前、あの野郎の座っている席から1席空けて、紺のスーツの20代後半の刑事が座る。
閉館2分前。
あの野郎が帰り支度を開始して、やっと自分も帰り支度。
あの野郎を尾行する気満々だ。
だがしかし、あの野郎には、そんなことはすぐにお見通しだ。
顔、靴、背格好、そして、1432の軽の後ろの席に乗って帰っていく姿を、あの野郎は、しっかりと記憶した。