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誣告の伝兵衛。≪小説・新連載vol.12≫

おらなんだけどよ。

なんだかしんねぇけどよ。

あの野郎のほかに、おらを脅かす存在が急浮上してきたぞ。

その野郎はよ。

毎日、絶対自転車に乗らず、ひたすら愛車の自転車を押し続けながら、12時にやって来てよ。

おらのソファーに座ってやがるんだよ。

なんかエロ本かなんか知んねぇけどよ、閉館まで7時間ず~と雑誌読んでやがるぞ。

おそらくよ。20代後半だな。

男。

坊主で、これでもかっつぅぐらい細ぇー目でよ。

やせ型だな。

グレーのトレーナーっつうのか。

下は、青色のジーパンだな。

靴は、おらのリュックと一緒のNIKEの春用モデル。

白色。

それに、うすい青色の、馬鹿でっけえNIKEのロゴがついてやがる。

母親の涙をモチーフにしてやがるんじゃねぇか。ありゃ。なぁ。

毎日働きもせず図書館で読書三昧で、その野郎の母親も泣いてやがると思うしな。

最近新調したばっかりでよ。

そのNIKEの靴が、その野郎の図書館で恥ずかしくもなく1日中いられるエネルギーの源泉となっているんだとよ。

買ったばかりなのに、外は雪が解けだして道がべちゃべちゃだから、水たまりを歩いた時に水を撥ねてできたシミができて、もううっすら汚れてやがる。

それによ、おらが知り合いに調べさせた情報ではな。

自転車の鍵は絶対に掛けないんだとよ。

なんでも、ぼろぼろの自転車は絶対盗まれないんだ、という確固たる信念が、あるんだとよ。

籠に薄緑色のこ汚いテープを一枚貼付け、こ汚いティッシュを一枚籠の底に巻き付け、籠が取れかかって籠が左右に行ったり来たりしていることが、ぼろぼろの証なんだとよ。

何言ってやがる、その野郎。

何でも、晩飯も食わずに、閉館時間過ぎても、まだ読んでやがるんだとよ。

その野郎の指定席となっているソファーは、その野郎のケツから出やがるその野郎のこ汚い汗によって、その野郎の履いているジーパンの青色がうっすら滲んでいるんだとよ。

何でも、本人は、図書館にある活字はすべて読んでやるって、息巻いているんだとよ。

アンチバカの壁ってか。

図書館にあるって限定すること自体が、バカの壁なんだけどな。

たいてい閉館時間を1分過ぎてから、本の貸出手続をするんだとよ。

おらが言うのもなんだけどな。はた迷惑な野郎だい。

でもよ、副館長さんが、閉館10分前に「そろそろ閉館のお時間です。」と利用者たちに帰宅を促す時があってよ、その時ばかりは、その副館長さんが動き出すや否や抜け目なくその様子をキャッチしやがってそそくさと逃げるように帰るんだとよ。

その俊敏な動きときたら、ミーアキャットみてぇだっつって、図書館職員達のなかで有名らしいな。

小せぇ野郎だな。

ったくよ。