誣告の伝兵衛。≪小説・新連載vol.20≫
おらだ。
あの野郎、まだ来やがるぞ。
おら、また、あの野郎を脅かす手段を発明したぞ。
それは、よ。
あの野郎がトイレ休憩をするのは、たいてい、30分おきだ。
でもよ、ジャスト30分とは限らねんだ。
そういう時はよ、おら、わざと席を立って、自習室を3メートルぐらい闊歩して、おらの指定席にまた戻るんだ。
それを、2,3回繰り返してやるんだ。
そうすっと、どや。
あの野郎、せかされた気分になりやがるだろう。
どや。
おらの、いびりは。
愚かな伝兵衛。
それを、徘徊老人というんですよ。
自分の勉強に集中しなければならないのに、他人の勉強に集中する、伝兵衛。
晩節を汚すことに、残りの短い人生のすべてを費やす。
伝兵衛のやることなすことをすべて完全に把握している、あの野郎は、伝兵衛の鬼畜の所業を全て記憶する。
おとなしくしてないと、図書館の職員さんに、小さな体を椅子に紐でくくりつけられますよ。
わかりましたね、伝兵衛。