誣告の伝兵衛。≪小説・新連載vol.14≫
おっす。
おら、悟空。
おいおい。
嘘だよ(笑)
おらだ。
伝兵衛だ。
ドラゴンボールの悟空がよ。
なんか、一人称を「おら」って言ってやがるけどよ。
おらも、おらって言うんだよなぁ。
勝手に使わねぇでほしいよな。
いやいや。
おらの横によ。
4日間連続で、ぴったりと張り付く男みたいな女が来たんだよ。
実はな。
2日目の終盤で、初めて女って気付いたんだよ。
この野郎。
いや、もとい。このメコがよ。
トイレ休憩だと思うんだけどよ。
席を離れるときによ。
自分の机の上の勉強道具によ。
ケツに敷いていたフエルト生地の毛布を掛けたんだよ。
その毛布がよ、ピンクのハートがこれでもかっていうぐらいによ。
たくさん図柄になってやがったんだ。
この毛布の図柄を見てよ、おら、初めて、メコだと気づいたんだ。
だってよ。
髪がおめぇ、短くてよ。
キューティクルのかけらも無くてよ。
だから、つい勘違いしちまったんだよなぁ。
だから。
堪忍な。
男と勘違いしちまってよ。
そしてよ。
このメコがよ、勉強中は必ず履いているネイビーのゴム長靴を脱いでやがるんだ。
そのほうが楽だからっていう、馬鹿みたいな理由なんだろうな。
公共の施設である図書館のなかで、靴下1枚になるっつうのは、おらが言うのもなんだけどよ。本当に恥ずかしいことだな。おい。
それによ、この狭い隣同士で、このメコの動きが終始忙しねぇんだよな。
レジュメかなんか知んねぇけどよ。約5時間、がさがさぁー、がさがさぁー、ってなぁ。
そんな机上での忙しない光景を見ていると、なんかのストライキの真っ最中なのかもしんねぇな。
一人デモなのか。
そのメコの休憩中に、そのメコの机にあるレポート用紙の少しが見えてよ。
介護士の資格試験をめざしてやがるのか、そのメコがレポート用紙によ、「ご老体を真剣に介助しなければならない。」って書いてやがるんだ。
何言ってやがる。そりゃそうだろうよ。それは、お前、心の中で思っていればいいんだよ。いちいち文字にすることじゃねぇんだい。
それに、「ご老体」って。お前ぇの師匠のことか?